研究紹介

当研究室の主な研究テーマは以下の通りです。

1. 超伝導量子コンピュータ
2. 超伝導と磁性のハイブリッド量子デバイス
3. 超伝導ナノストリップ/マイクロワイヤ単一光子検出器
4. 新しい高温超伝導物質の探索

1. 超伝導量子コンピュータ

現在使われている計算機は半導体技術によって成り立っています。私たちは、現在の計算機が苦手とする問題を飛躍的に高速に解くことが期待されている、量子計算機に関する研究開発を進めています。現在は特に、量子計算機の要素素子である量子ビットに関して、窒化物超伝導材料を軸とした独自の新しい磁束型量子ビットの開発に取り組んでいます。

磁束バイアスフリー量子ビットのチップ写真((国研)情報通信研究機構との共同試作)。

2. 超伝導と磁性のハイブリッド量子デバイス

互いに相容れない性質をもつと考えられてきた超伝導体と磁性体を融合することにより、従来の常識を覆すような新しい物理現象が現れます。私たちは新たな物理現象の発見や量子デバイス応用に関する研究に取り組んでいます。現在は特に、π接合と呼ばれる超伝導体と磁性体の積層構造に注目し、その高度化に取り組んでいます。

超伝導/磁性/超伝導接合で発現するπ接合のイメージ図。

3. 超伝導ナノストリップ/マイクロワイヤ単一光子検出器

光の量子である単一光子を精度良く検出する技術は、量子通信や宇宙通信、生命科学等の幅広い分野において需要が高まっています。私たちは、超伝導ナノ薄膜を用いた新しい単一光子検出器(Superconducting nanostrip/microwire single-photon detector; SNSPD/SMSPD)に関し、超伝導材料やデバイス構造・物理の観点から高性能化・高機能化を目指しています。

SNSPDのチップ写真と受光部の拡大写真。

4. 新しい高温超伝導物質の探索

室温超伝導物質の発見を目指し、新しい高温超伝導物質の探索的研究を行っています。私たちは、電気エネルギー・化学エネルギーを利用したソフト化学法による低温合成により、通常では合成が困難な物質を合成する技術を有しており、これまで数多くの新しい超伝導物質の発見に成功してきました。

鉄系超伝導体FeSeへのLiおよび巨大有機分子のインターカレーション(挿入)による超伝導転移温度Tcの向上。

5. 低次元量子スピン系物質におけるスピン熱伝導

(※2022年度で本テーマは終了)
近年、低次元量子スピン系の物質において、スピンが大量の熱を運ぶ物質あるいはスピン状態の変化によって熱伝導率が劇的に変化する物質が発見されました。私たちは、スピンによる熱伝導としては世界最高の値を示す物質の作製に成功しており、スピン熱伝導のメカニズム解明と新しい絶縁性高熱伝導材料の開拓を目指し研究を進めています。

低次元量子スピン系物質および各種材料の熱伝導率の温度依存性。